海道左近
原作
2017年の暮れに担当さんからのお電話でアニメ化決定のご連絡を受け、同時に制作会社がNAZさんであることやスタッフの方々についてもお聞きしました。
また、作品としては書く機会のなかった物語を特典として書く機会をいただきました。
公式ツイッターで試し読みが公開されているブルーレイVol.1の特典小説は前日譚であり、シュウを主人公とした海洋冒険活劇となっています。
告知されているとおり、544ページの大ボリュームになっており、「普通なら刊行できないページ数」の代物でもあります。
そのため数年前……ちょうどアニメ一期のエピソードを書いていた頃にプロットだけ作り、以後は書く機会のなかった物語でした。
しかし今回、アニメ特典という機会をいただき、皆様にお見せできることになりました。
書いている内にプロットよりも膨らみましたが、自信をもってお届けできるエピソードになったので結果オーライです。
まずはアニメ公式ツイッターでの試し読みから触れていただければと思います。
『より多くの人に作品を知ってもらえれば良い』ということが第一ですね。
小説家になろうに投稿し、ホビージャパン様で書籍化させていただきました。
その後は今井神先生がコミカライズを、La-na先生がスピンオフを描いてくださったお陰で、どんどん本作を知っていただく機会が増えていきました。
そして今回のTVアニメ化です。多くの人の目に留まるメディアなので、本作を知らなかった人達にも興味を持っていただければと思います。
そして、逆に辿るように漫画作品、書籍、原作と読んでいただければ、これほど嬉しいことはありません。
実際にWEB版の感想欄で、「全巻購入しました」や「最新話に追いつきました」と書いてもらえたときはとても嬉しかったです。
一話二話を先行上映の会場で観たとき、感動しました。
自分の作品のキャラクター達が喋り、動く。娯楽小説を書き始めたときから『いつかは』と抱いていた夢が結実した瞬間でした。
何より自分の作品をスクリーンで見て、集まってくれたお客様達を見て、本当にこんな日が来るとは夢のようだ、と。
ただ、それはゴールではなく過程なので、今後もインフィニット・デンドログラムの執筆を頑張っていこうとも思いました。
また、工画堂スタジオさんが手掛けてくれた「なぜなにデンドログラム」も素晴らしく、インフィニット・デンドログラムのコミカルや説明部分を大きく担ってくれました。
ブルーレイ特別編で脚本を担当させていただいた際、新規素材の必要になるシーンをいくつも書いてしまったのですが、ご対応いただいて非常に楽しいアニメを作っていただけました。本当に感謝しています。
四話のレイとフラミンゴの会話ですね。
今後アニメでも原作でも因縁深いレイとフランクリンのファーストコンタクトが、斉藤さんと松岡さんの掛け合いで大変コミカルに描かれています。
ここに限らず、フラミンゴ……Mr.フランクリンの出てくるシーンは作者として見ていて楽しいものが多いですね。決して愉快な状況ではないとしても、松岡さん演じるフランクリンが押し切ってくれます。
全てのキャラクターに言えるのは、「これから見てくれる人が増えるから頑張ってほしい」という気持ちです。作品やキャラクターのファンになってくれる人が増えればな、と。
また、主人公であるレイには、「作品の性質上、いつも格上のひどいボスとばかり戦わせてしまって苦労を掛ける。でも今後もずっとそうだから頑張ってほしい」、と。
そして、ヒロインであるネメシスには「アニメになって気づいたけど、私は思ったよりも背景で君にたくさん食べさせてたようだ」、と。
本当に、作者が思っていたより彼女の食事シーンが沢山ありました。
『その場にいるけど喋らない、そんなときは食べさせておこう』という状況がアニメになって具現化した形です。
ですが、今後もきっとネメシスには背景で食べさせますね!
音、という部分で最も大きく作品世界の広がりを感じました。
小説の頃は私本人にとっても文字情報しかない世界です。
しかし書籍になり、タイキ先生によって主要キャラクター達のデザインや王都を始めとする劇的な建造物、そして名シーンと言える場面に形が与えられました。
今井神先生のコミカライズでは、書籍では描かれていなかったキャラクター達や細かな描写までもが形を得て、より作品の世界をイメージしやすくなったと思います。
アニメではさらに音が加わります。
キャストの皆さんの演技は、アフレコの時点で分かるほどに素晴らしいものでした。
原作について熱く語ってくれて、感情の込もった熱演でレイを演じていただいた斉藤さん。
口調ゆえに言い回しが難しい台詞も多く、キャラクターとしての心情の切り替わりもあるネメシスを頑張っていただいた大野さん。
ルークとバビのコンビとしての在り方を熱心に聞いた上で演じてくれた小市さんと高田さん。
複雑な背景と立ち位置のユーゴーを、原作以上に良さと苦悩を引き出して演じてくれた村瀬さん。
台詞が全てひらがなで棒読みという逆に難しかっただろうキューコを演じてくださった小倉さん。
コミカルクマと真面目クマと過去と素顔、状況によって大きく演じ方が変わるシュウを全うしてくれた日野さん。
マリーの登場シーンで想像を絶する胡散臭さを発揮しつつ、持ち前の明るさでアフレコ現場を盛り上げてくれた日笠さん。
最初に聞いたときからフィガロのイメージと合致し、アフレコでも素晴らしかった鈴村さん。
音声の加工前から迅羽の声を特徴的に演じてくださった東山さん。
チェシャのキャラクターを完璧に具現化してくれた井澤さん。
そして、物語後半が本当に「フランクリン・オンステージ!」となるほどの怪演をしていただいた松岡さん。
メインキャストだけでなく皆さんが印象的で、思い出深いアフレコでした。
また、事前に音源をいただいていた楽曲も大変素晴らしいです。
OP曲である「Unbreakable」は曲名から歌詞までデンドロらしさに溢れ、リリアーナを演じられた悠木碧さんが見事に格好良く歌われています。
エリザベート役の内田彩さんの歌われるED曲「Reverb」も、優しく耳に染み入る歌はずっと聴き続けられます。
そして平松さんの手掛けられた素晴らしいBGMは、今では原稿の執筆中に手離せません。特にベルドルベルの楽曲は彼のブレーメンの特性や戦術までも合わせた本当に素晴らしいものなので、ぜひサントラで聴いていただきたい名曲です。
アニメ本編はあと三話で終了ですが、是非完結まで見届けていただきたいと思います。
そして、その後のストーリーやアニメで描けなかったエピソードに興味を持たれた方が、原作や漫画版、スピンオフを読んでいただけたならばとても嬉しいです。
形は様々ですが、今後とも本作を応援よろしくお願いいたします。